読書日記ふう
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親と子、それから……

『流星ワゴン』重松清著(講談社文庫)
はっきり自慢する。
うちは、親子の仲はとてもいい。といっても、親と私との間の話。実際に、ここに子供が入ってきたら、またいろいろなことで苦しむのかもしれない。
かつて、ちょうど成長段階にある自分と、ちょうど現役をしりぞく年齢になった両親とのあいだには、やはり葛藤はあったように思う。男同士となると、その葛藤はとても大きなものなのかもしれない。

この本、『流星ワゴン』は、ちょうど男の子と病で衰えつつある父との間にいる、さえないサラリーマンの話だ。サラリーマンといってもリストラされ、どこにも所属するところがない。妻は不倫中、息子は家庭内暴力という、ひどく落ちぶれた設定。
そこで、「死んでもいい」というところから、話ははじまる。そこから先は、ありえない設定のファンタジーだ。

人間がひどく何もかもに疲れ果てたときに感じるのが、「死んでもいい」という感情なのかはよくわからない。「死にたい」というようなものじゃないのかと思っていたのだけれど、そこから主人公は、過去を見直すパラレルワールドに迷い込む。
そして、病で死にかけている父との関係、妻や息子との関係を、あらためて突きつけられる。そこで、息子としての自分、父としての自分を考える。

主人公の弱さや情けなさ、そして無神経さ、そして設定の不自然さがイラつくところもあるが、そんな弱さや情けなさ、無神経さは、どこか自分の中にも存在しているからかもしれない。だからといって、もちろん主人公と自分を重ね合わせるには、あまりにも設定が違いすぎている。でもやはり、そこに描かれている親子たちの姿は、生きているかぎり、どこかでわかるところがある。「自分にもこんなことがあった」と。

それはそれとして、現実の世界は、小説を読んだことでは変わらない。だが、小説を読むことで、現実の見方を変えることができれば、そこに現実を変える可能性がわずかながらでも生まれるのではないだろうか。

オススメ度:★★★★



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